電源物語

Vol.20:電力危機の回避。

第20話になっていますが、実は、19話は、昨年末に書き上げています。

「OHM」という雑誌の記事から特集記事「スマートモビリティ」を取り上げているので、記事の転載許諾申請を行っています。そのため、許可が下り次第、アップしたいと思いますので、暫しのご猶予を。

2012年が明け、東日本大震災から10カ月になり、やがて1年を迎えようとしています。福島原子力発電所の事故の影響は、著しく日本のエネルギー・電力政策に大きな影響、ダメージを与えてしまい、原子力発電の是非が大きく取り上げられています。

そのためか、1月22日付の読売新聞朝刊に「電力危機の回避を最優先せよ」という社説が掲載されていますので、ご紹介したいと思います。

今年は、国民生活に不可欠なエネルギーをどう確保するか、この難問を解決しなければならない重要な年である。福島第一原子力発電所事故の影響で、定期検査のため停止した原子力発電所の再稼働もできないので、このままでは、4月下旬にも全国の54基原子力発電所が、全て停止し、電力の3割を失う非常事態に陥る。野田首相は、安全確認できた原子力発電所の再稼働を繰り返し述べているが、実際には、その目途は立っていない。野田首相は、強い危機感を持って、早期再稼働に指導力を発揮すべきだ。

原子力発電所の再稼働が急務

経団連の調査では、電力不足が2~3年続くと製造業の6割が国内生産を縮小・停止させ、電力不足は、産業の空洞化と雇用の減少を引き起こす。原子力発電所に代わって火力発電で供給するにも限度があり、追加の燃料費が、年間3兆円以上かかり、経済的負担も大きい。東京電力は、増えた燃料費を賄うために4月から工場やオフィスなどの大口契約者向け電気料金を平均17%値上げする。
また、家庭向け電気料金についても値上げを検討している。電気料金の値上げは、生産コストに跳ね返り、企業の経営体力と競争力を弱め、家計の負担も増え、設備投資や消費の低迷から内需を冷やすことになる。“電力不況”を防ぐためには、安全が確認された原子力発電所の再稼働は欠かせない。各原子力発電所の安全性を国の責任で確保し、地元自治体などの理解を得る必要がある。

現実的な電源構成を示せ

エネルギー政策の抜本的な見直しが大きな課題となる。野田首相は、中長期的には、原発依存度をできるだけ下げる方針を示しているが、具体策は、曖昧だ。今年の夏には、新たなエネルギー戦略をまとめることにしているが、審議会や会議が乱立し、議論は拡散気味である。野田首相が、主導して、将来のあるべき電源構成について明確な方針を示すべきだ。

太陽光や風力など再生可能エネルギーへの期待は大きい。エネルギーの国内自給や環境保全の観点から普及拡大が望ましい。
しかし、水力を除けば全発電量のわずか1%、発電コストも割高で、天候などによって大きく増減するなど弱点もあるので、季刊電源に育つには、長い年月がかかるだろう。電源構成の将来は、安定供給や経済性、安全性など総合的に考慮した現実的な物にしなければならない。政府は、唐突に原子力発電所を稼働から40年で廃炉にする方針を決め、60年まで延長することのできる例外規定を設けるとしているが、代替電源のあても無く「40年廃炉」を打ち出したのは、無責任である。古い原子力発電所を安全な新型炉に更新する選択肢も示すべきである。

政府が将来「原子力発電所ゼロ」を掲げてしまうと原子力分野の人材が海外に流出するだけでなく、後進も育たなくなり、技術は衰退し、既存原発の安全操業や廃炉さえ困難になりかねない。中国など新興国は原子力発電所の増設を推進している。日本は、高い技術を維持し、安全な原子力発電所の輸出や操業ノウハウの提供で、貢献すべきである。

政府は電力制度改革にも着手した。電力会社が発電から送電を一括して行う体制を見直す「発送電分離」が、テーマだ。
また、電力会社が見積もった経費を基に電気料金を決める「総括原価方式」の見直しも議論している。

競争原理を導入して、コストを軽減する狙いは良いにしても、性急な改革で電力供給が不安定になる恐れがある。
約10年前、アメリカ、カルフォルニア州で、頻発した大規模停電は、発送電分離に伴う送電設備の更新の遅れなど、電力改革の副作用が一因とされている。教訓としたい。

東京電力の改革も急務だ。政府などが出資する原子力損害賠償支援機構の設立で、被害者に対する当面の賠償資金は確保された。しかし、福島第一原子力発電所の廃炉費用などは、支援機構による資金援助の対象外だ。東京電力は、10年間で、2.6兆円のリストラを実施するが、経営努力だけでは、巨額の費用を賄うことはできない。

国も事故コストの分担を

政府は支援機構を通じて公的資金を注入して、東京電力を実質国有化する方針だ。経営破たんを防ぎ、東京電力に事故収束、損害賠償、電力安定供給の3つの責務を果たさせるために必要な措置といえる。ただし、損失拡大と追加支援の悪循環に陥る危険性がある。
国有化を契機に廃炉や除染などのコストを国がキチンと分担する仕組を検討すべきだろう。

原子力発電所事故の賠償責任を民間電力会社だけに課する原子力賠償法の妥当性や原子力発電事業の「国策民営」の是非などについても、本格的に論議しなければならない。


という内容の社説です。
社説ですから総花的になることは仕方がないのかもしれませんが、電力供給力の危機に対する部分が駆け足ですね。

電力不況を煽る経団連は、基本的には、東京電力寄りですから、その調査結果の丸呑みは、どうでしょう?発送電分離によるとしているカリフォルニア州の停電は、国が違えば、システムも違うので、比較の対象にはならないと思いますし、逆にそう言った事例があることが、より良いシステム構築の一助になると考えた方が建設的です。


という事を踏まえて、同じ読売新聞の1月4日朝刊の記事を紹介します。

Part 1 大転換 米国発の「シュールガス革命」が世界のエネルギー事情を大きく変えるかも知れない。

「脱原発依存」の流れは止まらない。

国内外での「大転換」の動きを報告する。

アメリカでは、シュール(頁岩)という岩の隙間に入り込んでいるメタンを主成分とする天然ガスの事で、今までは、採取が困難でしたが、近年の技術開発によって採取が可能になり、アメリカのエネルギー事情は、一変したそうです。

アメリカエネルギー情報局(EIA)の2005年版長期エネルギー見通しでは、天然ガスの輸入依存度は、2025年は、28%の予測でしたが、2010年版では、9%。今年4月の2011年版では、4%と更に下がり、2035年には、0.8%まで低下するとし、原子力エネルギーへの依存度も2011年版では、2009年の20%から2035年には、17%と縮原発を予測して「原子力より天然ガス」に移行しているとしています。

電源物語 第16話の「原発後。これからのエネルギー」をご参照ください。

これまで採掘が難しかった天然ガスの一種である「シュールガス」の生産がアメリカで本格化してきた。埋蔵量の豊富なアメリカが天然ガスの輸入国から輸出国に転じる可能性が高く、世界のエネルギー地図が塗り替えられそうだ。火力発電への依存が高まりつつある日本のエネルギー安定確保にも良い影響を及ぼしそうである。
(ニューヨーク 小野谷太郎、経済部 瀬川大介)

「掘削地争奪」

ペンシルベニア州の広大な丘陵地を切り開いたガス掘削地では、大型トラックが行き交い、ガスの刺激臭が漂う。
キャボット・オイル・アンド・ガス社は、全米5州で石油や天然ガスの採掘を手掛ける独立系のアメリカ資源開発会社で、ペンシルベニア州では、2007年からシュールガスの開発に乗り出している。
同州は、アメリカ東部に広がる世界最大級の「マーセラス・ガス田」のほぼ中央に位置し、同社は、約160か所のガス井で日量約5億立方㌳(約1400万立法㍍)を採掘し、パイプラインで電力会社に供給している。

同社幹部のジョージ・スターク氏によると「一度ガスが噴き出せば25~35年は、生産できる」
アメリカでは、200社以上が掘削地の争奪戦を繰り広げ、マーセラス・ガス田では、土地使用料がこの3年間で50倍に上昇した例もあるという。

「輸出国に転換」

アメリカエネルギー情報局(EIA)の報告では、国内で採掘可能なシュールガスは862兆立方㌳(約24兆立方㍍)で、中国に次いで世界第2位の埋蔵量だ。アメリカの100年以上の需要を賄えるという試算もある。EIAは、アメリカ国内の年間需要量に占める天然ガスの割合が、2009年の14%から2035年には、46%まで高まると見ている。その一方で、輸入は11%~1%に減ると予測した。

ブルッキングス研究所エネルギー安全保障責任者のチャールズ・エビンジャー氏は「アメリカは2015年から20年にかけて本格的なガス輸出を始めるだろう。アメリカ国内にある輸入用設備は、いずれ輸出向けに転用され、日本などアジア諸国への輸出が増大する」と予測する。中米のパナマ運河は2014年に拡幅する計画が進んでおり、完成すれば、メキシコ湾岸の液化天然ガス(LNG)基地から日本やアジア向けに輸出する環境が改善されることになる。

ドミノ倒し

天然ガスを燃料とする火力発電所は、化石燃料の石油や石炭を燃料とする場合に比べて、温室効果ガスの排出量が少ないために今後、天然ガスの需要が世界的に伸びることが見込まれている。そのため、シュールガスの生産拡大が、エネルギーの国際的需給バランスを変えつつある。中東のカタールでは、アメリカ根の輸出増を見込んで2011年のLNG基地の生産規模を7700万㌧と2008年の2,5倍に増強したが当てが大きく外れた。供給過剰になったカタールのLNGは、地理的に近いヨーロッパに向い、ロシアからの輸入に頼るヨーロッパ諸国は、調達先の多様化にする好機となっている。

日本にメリット

アメリカのシュールガスの増産の影響で、ロシアがヨーロッパ向け輸出を縮小せざる得ない状況は、日本のエネルギー安全保障の観点からも注目される。ロシアが開発を進める極東サハリン沖や東シベリアの天然ガスについて主要輸出先としての日本や中国の位置付けが重くなる。サハリンでは、三井物産と三菱商事がLNG開発に参加している。日本向け供給が増えれば、中東やオーストラリアに比べて輸送コストが低いだけに日本に利点が多い。

また、シュールガスの相次ぐ開発によって、ガスの相場価格が下落傾向にあり、輸入国の日本にとっては追い風になる。アメリカの2011年11月の天然ガス価格は、1000立法㍍当たり117ドルと2008年のピーク時に比べ1/4程度に下落した。

今後もこうした低水準で推移するかは見通せないが、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)井原賢氏は「世界中で新たなガス田の開発や採掘が進めば、需給が緩んで日本もより安く調達できるようになる」と話している。伊藤忠商事が、昨年投資ファンドと共同でアメリカ資源会社を買収すると発表したほか、三井物産もアメリカテキサス州のガス田の権益を12.5%分取得した。こうしたことから、日本政府を関心を高めておりJOGMECは昨年、日本への輸出を視野に三菱商事と東京ガスなどが参加するカナダのシュールガス開発事業に出資することを決めた。

という記事ですが、22日の社説とは、矛盾というかどっちなの?という部分がありますが、人の命や環境への負担を考えれば、脱原発に舵取りして、LNGやシュールガスによる火力発電にシフトしつつ、第16話で紹介したようなエネルギーを模索して行ってもらいたいものです。

特に注目しているエネルギーは、筑波大の渡邉信教授のバイオ燃料になりそうな「藻 オーランチオキトリウム」ですね。動力源としての燃料は、まだまだ必要ですから、石油に代わる燃料として、魅力的ですね。

先月発売の「Newton」という科学雑誌の2012年1月号にも「電力と新エネルギー 日本が直面している大問題」という特集記事が掲載されています。

2012年1月23日

電源物語

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