電源物語

Vol.19:電気自動車と電源

「OHM」2011年12月号

愛読誌に月刊「OHM」が、あります。
毎月、購読している訳ではありませんが、新聞広告で見た特集記事が、興味をそそられるタイトルでしたら、購入しています。
ちなみに秋葉原の書泉ブックタワーには、バックナンバーが揃っています。
と言うことで、今回のテーマは「電気自動車と電源」です。

前回、紹介した展示会「CEATEC JAPAN 2011」でも日産リーフを蓄電池として使用したモデルハウスが、展示されていたように、3/11以降は、脱原子力発電が、活発に議論されていることは、皆さんもご存じのとおりです。
そして、26年ぶりに東京で開催された「TOKYO MOTOR SHOW」でも国産メーカーのみならず、海外メーカーも電気自自動車のプロトカーを数多く展示していました。

三菱自動車のi-MIEVによるデモです。

室内の電気を全て蓄えられたバッテリーから供給しています
写真は撮れませんでしたが、同じく三菱自動車では、軽規格のミニキャブの電気自動車によるMIEV カフェを開いて、コーヒーを振る舞っていました。
国産メーカーの多くは、似たようなデモをやっていました。
海外メーカーは、ここまでのデモは、行っていませんでしたが、プロトタイプと言うより市販間近と思われる実物を展示していました。

フォルクスワーゲン社

充電中?

かなり混雑していたため、来場者が写ってしまってクリアな写真が殆ど有りませんでした。

さて、本題に戻って、「OHM」誌の内容についてお話して行きます。
タイトルは、「スマートモビリティ‐自動車はこれからどうなる?」となっています。

日本の自動車保有動向

左のグラフ都道府県別の1世帯当たりの自家用車普及台数(2011年3月末)
右は、1996年から2011年までの車種別の自動車保有台数の推移です。
東京都や大阪府などは、概ね1台以下ですが、地方は、1台以上、東北、北陸などでは、1.5台以上保有していますね。

東京都は、0,5台を下回っています。
愛知県が多いのは、地元にトヨタが、あるためでしょう。
そして、その70%以上が、乗用車で、占めています(青色の部分、次は貨物車、グレーの部分はその他です)。
つまり、家庭部門(民生)での普及が進んだということです。
それでは、特集記事の内容について視て行きましょう。

「電動車両の導入・普及の展望と課題‐本格導入に向けて‐」

(独)産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 客員研究員 清水健一氏

自動車は、原油の消費拡大や枯渇、温暖化防止のためのCO2排出のための排ガス低減などの問題が存在し、世界全体でも原油消費量の50%強を運輸部門で使われ、その大部分が、自動車に使われています。
CO2も世界全体の20%強が運輸部門から排出されているそうです。
そうした問題に対応できるものとして、電気自動車に期待が集まっている訳です。

過去、様々な電気自動車が、試作されてきましたが、期待されながらも永く普及に至りませんでしたが、近年は、トヨタ プリウス、ホンダ インサイト等に見られるハイブリッド車が、実用化されて、さらに家庭で充電可能なプラグインハイブリッド車も来年には、販売されるようです。

この過程では、モーターが、直流機から永久磁石式同期機に、電池が、鉛電池からニッケル水素電池やリチウムイオン電池等に変わり電池管理システムが導入されたことによって性能は格段に向上しましたが、電池の価格が高額だったために電気自動車から、より実現可能なハイブリッド車にシフトして行きました。

エネルギー損失部位と比率

中型乗用車では、100のエネルギーを入れた時、最終的にどの位のエネルギーが駆動に使われているかを示しています。
ここでは、高速道路走行時で75%、都市内走行時では80%以上が、動力として使われていないことを表しています。

主な原因は、低負荷状態では、エンジンの効率が極端に低下することに有ります。
全体的に動力としては、25%~20%しか取り出せないことが、ガソリン車エンジンの大きな欠点と言うことです。
そのため、広範囲に渡って効率が一定で安定し、運動エネルギーを回生エネルギーとして回収して電気に戻せるモーターを動力として活用しようと言うクルマが電気自動車です。
ハイブリッド車は、その運動エネルギーの回生に加えて高出力が取り出せるエンジンを組み合わせることによって、効率を改善しています。

電気自動車のネックは、電池ですが、電池も1kg当り何Whあるかというエネルギー密度で、比較して見てみるとガソリンが、10⁴~10⁵に対してリチウムイオン電池でも200Wh/kgとリチウムイオン電池の開発が進み密度が高くなったとしても理論値が300Wh/kgなのでガソリンとは、2桁位の大きな違いが、あります。
これから先は、新しい方式での電池を開発していく必要がありますが、劇的なエネルギー密度の向上は余り期待できないと思われます。

現状では、最も実用化が進んでいるハイブリッド車でも高性能な電池を大量に必要とする大型車両への普及は難しく、今後は、電気自動車寄りのプラグインハイブリッド車に移行する可能性が高いと思われます。
では、電気自動車は、どうかと言うと、やはり、現状の電池性能と高価格が、ネックとなり本格的な普及と言うよりは、都市内に限定した使用が、現実的でしょう。

現在のガソリン車は、高度に完成されたもので、一朝一夕にこのレベルまで達した訳では無く、長年のデータの蓄積と分析によって成し遂げられたものです。
したがって、電気自動車も今後の高性能電池の開発と並行して実運用での幅広い条件下でのデータの解析によって低価格化が促進されれば、その普及が、大いに期待できるそうです。

「トヨタ自動車が目指す次世代自動車とクルマ社会」‐豊田市の社会実験が描く未来像‐

トヨタ自動車㈱ 技術統括部 主査 担当部長 岡島博司氏

環境・エネルギー問題への対応シナリオ

トヨタ自動車として21世紀の社会ビジョンを環境、エネルギー、社会構造、人間に分けて考え、そのすべてにクルマが、関わっているというビジョンです。
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の影響によって、環境、エネルギーは大きな転換期を迎えています。
クルマのエネルギー源は、当面、石油が主流ですが、将来は、枯渇することが明白なので、代替エネルギーを増やし、様々な燃料をクルマが使い分けることになると思われます。

その大きな柱は、電気です。

しかし、電気をクルマに使う際の関心事は、1回の充電当たりの航続距離です。
その場合、電池を貯蔵する技術と電池容量、コストが、大きな課題になります。
電池のエネルギー密度は、液体燃料に遠く及ばないため、当面は、液体燃料を使いながら、高効率な電池の開発を進めながら、エネルギー密度を伸ばしていくことが重要になります。

しかし、液体燃料は、作る時や走っている時にCO₂を排出します。
そのためトヨタでは、世界に先駆けてハイブリッド技術を実用化してガソリン車でもCO₂排出量の削減とエネルギー問題への対応に取り組んできました。
一番のポイントは、必要のない時にエンジンを止め、最も効率の悪い始動時は、エンジンを使わずモーターを動かす。
低速走行時や減速時に余ったエネルギーを回収して電池に蓄え、再び加速に使う。
回生ブレーキを使用し発電して電池に戻す。
そして、またスタートに使うようにしてエネルギーを循環させることによって燃料消費の改善を図っています。
ハイブリッド社に次ぐ環境対応車として有力なのは、プラグインハイブリッド車です。
電池は外部電力で充電でき、一定の距離をEV(Electric Vehicle)走行できます。
つまり、近距離は、電気自動車として走り、電池の残りが少なくなると通常のハイブリッド車として走行することができるので、遠距離を走行する時は、ハイブリッド車として使えます。
現在は、充電池だけでの走行距離は、23.4km。ハイブリッド車として走行した場合の燃費は、プリウスと同等の30.6km/ℓです。
理想的と思われるプラグインハイブリッド車ですが、問題点がない訳ではありません。
電池の充放電の問題の解決が大きな課題と言えます。
電池の特性として空っぽから満タンにまでの中央付近を小刻みに使う、このような使い方が、電池を劣化させずに使うことができますが、実際には、利用者は、充電の時は、満タンに近い所まで充電して、空のギリギリまで走行したい、と言うことになります。

そうなると電池の耐久性が問題になってきます。
また、どの位の容量の電池を積載するか?という問題です。
普段短い距離しか走らないのに重い電池を積んで走ると言うことは、電費、燃費にも影響を与え、余分なエネルギーを使うことになりますので、利用者の実情に合った電池容量とコストバランスが求められます。
鍵は、電池のエネルギー密度の向上と低コスト化となります。

今後、電池を積んだクルマが大量に普及すると、一方では太陽光や風力などの再生可能エネルギー発電を増やす必要が出てきます。
この不安定な電源を安定電源にするには、系統側にNAS電池のような大型蓄電池を設置する、スマートグリッドで電力を融通するなどをしないと系統を維持することが出来なくなります。
再生可能エネルギーが導入されるには、一般住宅の太陽光パネルからでしょう。
そして、住宅につながるクルマに積んだ電池が活用できればより良い電力系統になります。
しかし、自動車はいつでも、どこでも好きな所に行けるというメリットがあります。
系統につながってしまっては、好きな時に乗れないことになってしまいます。
また、使い方によっては電池の消耗の問題も発生します。

スマートグリッド

豊田市の実証イメージ

豊田市の実証実験には、愛知県、名古屋大学、中部電力など26団体が参加し、トヨタ自動車もコミュニティ全体での電力利用を最適化するシステムを開発して、自然エネルギーと上手に共存する持続可能な環境に優しい社会づくりへの貢献を目指しています。

具体的には、一戸建て住宅に太陽光パネル、燃料電池、定置型蓄電池、電気自動車/プラグインハイブリッド車、エコキュートや省エネエアコンを設置。
需要と供給の未来を予測し、ミスマッチを解消して需要家のエネルギー消費に対して行動支援を行います。
生活者の行動パターンに沿って、家庭内・移動(通勤・通学・外出)・家庭外(移動先)のそれぞれの行動シーン毎にエネルギーの最適化が図られ、それらを統合し、生活圏全体でエネルギーの最適利用が達成されている次世代型地方都市型低炭素社会構造を目指しています。

特に太陽光パネルで発電した電位を極力有効に活用する。
そのために電気が余っている時にクルマに充電したり、家庭用蓄電池に充電したりします。
クルマの蓄電池のエネルギーを宅内で利用することをV2H(Vehicle to Home)。
さらに電力系統と連携してクルマと系統との間で電力融通を行うことをV2G(Vehicle to Grid)と言います。
また、家庭内の省エネ技術としてHEMS(Home Energy Management System)があり、家電機器や給湯機器をネットワークでつなぎ自動制御して、エネルギー利用状況を「見える化」することで、省エネを促し、それらの機器のエネルギー使用量を制御することが出来ます。

トヨタ自動車は、このHEMSとV2Hを組み合わせて家庭内の蓄電設備として電気自動車を利用するための技術開発を積極的に進めています。

最後にこの実証実験では、クルマや住宅内の各機器、設備をDC(直流)でつなぐことでの高効率化を目指しています。

例えば、太陽光発電は当然DCですし、蓄電池もDCです。
さらにエアコンやエコキュートのヒートポンプもインバータ制御しているので、一旦DC変換してから周波数を作っています。
そのため、全てDC化するとDC-ACコンバータ:パワーコンディショナーが1つに集約でき、コストダウンになり、全体の効率が大幅に向上します。
この実証実験は、5カ年計画で今年は2年目です。
トヨタ自動車では、機器や技術をレベルアップさせ、実証終了を待たずに実験で得られた知見を震災復興支援対策や電力需給バランス改善などに貢献できるよう社会に送り出していきたいと考えています。
V2Hが、可能なクルマの市販、蓄電池付のHEMSの市販などは、5年を待たずに可能になるのではないでしょうか。

「自動車‐電力系統のインタラクション」‐プラグイン自動車で実現する系統との双方向電力流通‐

エネルギー高度利用研究会 代表 ユニバーサルエネルギー研究所 技術顧問 堀 雅夫氏

最近、系統電力によって充電、走行するプラグインハイブリッド車からの系統への電力融通が、注目されています。
ハイブリッド車や電気自動車などの特徴は、大きな電気供給能力をもっていることです。
この自動車の持つ電力を電力系統が必要としている時に融通する技術が、開発されています。
V2G(Vehicle to Grid)と呼ばれています。
自動車1台を動かすには約50kWのパワーが必要となりますが、仮に15kW程度融通できたとすると日本全体では、817GW(ギガワット)のポテンシャルがあります。

これは、系統の平均全発電電力の7倍のパワーです。
実際に自動車から電力を融通する場合、系統電力の1/10位のパワーがあれば、相当なサービスができるため、およそ70倍の余裕を持っていることになりますので、部分的にプラグインするだけで、十分大きな力を発揮できることを意味します。
アメリカの統計では、自動車の一日の走行時間の平均は、62,3分であり、残りの23時間弱は、駐車中というのが実情です。
その駐車中のパワーを有効に使えば、極めて高いポテンシャルとなります。
日本においても実際に自動車が走行している時間は短く、台分の時間は駐車中と考えられますので、それゆえ、駐車中は、プラグインしておき、系統が必要としている電力をその場所で、その車が許容する範囲で融通することにより系統に対して相当量の電力融通効果が期待できます。
ただし、課題もあります。
電気自動車を使って、帰宅して直ぐにプラグを差し込みます。
そうなると充電集中と言うことになります。
ユーザーが一遍にコンセントに差し込んで充電すると大きなピークが発生して、系統の制御が困難になってしまいます。

また、系統とは別に末端の配電レベルでは、一つの柱上トランスを共有しているので、そこに複数台の電気自動車が、つながれるとトランスに対する負荷が極めて大きくなり、やはり運用上、好ましいことではありません。

電気自動車による電力サービス

送電・配電系統側の周波数制御や電圧制御、各種系統や発電所故障時に対処するための予備電力確保といったサービスを行い、電力は、瞬時の需要量に併せて発電・送電する必要があります。
これが出来ないと周波数や電圧の増減、最悪の場合は、停電という事態になります。
しかし、試算によると2030年の太陽光発電想定導入量に対して、余剰電力均衡に必要な蓄電池容量は、1,8億kW/h(資源エネルギー庁報告書)と推定され、自動車電池の電力貯蔵可能容量は、同程度以上あるために自動車電池の充電率を制御することにより太陽光発電の想定導入量に対する余剰電力均衡は可能と言うことが判明しました。

充電インフラと充電形態

クルマに入れる電気が交流か直流か?

現在は、240V、80A、19kWが規格となっていますが、将来は、20kW以上の充電を交流で行うことが検討されています。
その場合、単相のほか三相交流を使う可能性もあります。
直流充電は、450V、200A、90kWが、近く標準化され、さらに240kWまでの非常に大きな電力を入れることまで、検討されています。
240kWとなると今のガソリンスタンドで給油する時間と余り変わらないレベルで充電できます。

充電プラグタイプ(IEC規格)

充電プラグ(提案中タイプ)

これからのプラグインハイブリッド車や電気自動車は、その大きなパワーをかなりの割合で融通できる素地を持っています。
将来のエネルギーシステムにおける重要なプレーヤーになると言えます。
これに燃料電池やガスコージェネレーションシステムのパワーが加わることによって、今までとは違った画期的なエネルギーシステムを構築できるのではないでしょうか。

という内容の濃い特集記事でした。

かなり部分を割愛しましたので、詳しくご覧になりたい方は、書店でお求め下さい。
この中でも気になるキーワード「DC化」が、出ていましたね。
今の段階では究極の省エネ技術です。

この冬も関西電力管内と九州電力管内では、節電要請が出ています。
今年の年末時点で稼働中の原子力発電所は、6基となり、現在停止中の原子力発電所が、再稼働しなければ、来年の5月には全ての原子力発電所が、停止します。
政府が立てた計画では、来年夏の電力不足を解消するために、火力発電所の出力増と企業の自家発電設備の活用によって供給電力を1億6297万kWから最大642万kW上積みして、節電や省エネによって電力使用量を1億7954万kWから最大980万kW減らすことを考えています。
計画が実現すれば、電力不足は、0,2% 34万kWに留まる見込みだそうです。
ただし、この計画も電力需要は、気温などにも左右され自家発電も強制では無いため、実現できるかの見通しは立っていないそうです。

この計画は、原子力発電所の再稼働を狙ったブラフだと言う意見も一部には根強くあります。
何にせよ、停電と隣り合わせの状況はしばらく続きそうなので、皆さんにおかれましては、UPS(無停電電源装置)の導入をお薦めいたします。(宣伝でした)

次回は、記念すべき20回目です。

年明けになりますが、お楽しみに。

2011年12月27日

電源物語

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