電源物語

Vol.10: GPC-TQ開発ストーリー PT2

前回からの続きと言うことで、信濃電気「GPC-1500A」からボルトアンペア「GPC-TQ」の開発秘話、完結編をお送りいたします。

Vol.9では、信濃電気の民事再生問題で、続く形になりましたが、時系列的には、私自身は、2004年5月に?ボルトアンペアを立ち上げ、信濃電気の販売代理店としてスタートしています。

そして、信濃電気?が、2006年11月に民事再生法の適用を申請して、同社の事業は、債権債務と設備、従業員を含めて工作機械メーカーの?ディスコが、新たに設立した?ダイイチコンポーネンツに引き継がれました。

株式会社ディスコ http://www.disco.co.jp/jp/index.html

その経緯につきましては、日経ビジネス2007年2月12日号に信濃電気?社長のコラムが掲載されていますので、バックナンバーを捜して見て下さい。(内容的には、大きな声では言えませんが、大ブーイングです。)

話が逸れてしまいましたが、引き継がれてから、しばらくは、現状維持の形で販売を継続していましたが、翌年の2007年5月に最初の価格改定が行われました。

これは、旧信濃電気との企業風土の違いと言うか、原価、利益に対しての考え方が、キチンと確立して為に仕方のないことでした。

まぁ、ある意味では、信濃電気が、大雑把だったため民事再生に至った訳ですね。

しかし、販売する側にとっては、今まで、120000円販売されていた商品が、220000円に値上がりした訳ですから、堪りません。(現在は、296000円)

実際、それまでは、代理店側から販売予測して、生産を依頼して、10台単位で在庫を持っていたのですが、価格改定後は、在庫金額が跳ね上がったため、ユーザーから注文が発生する都度、メーカーに発注すると言う形にならざる得ませんでした。

そのため、好調に推移していた販売も伸び悩むようになりました。

そこで、ある技術者の方に相談した結果、ボルトアンペアブランドの電源整合器を開発することになりました。

基本的な回路設計を依頼し、その方の力添えで、トランス、板金、組立ての会社を紹介していただき、生産体制を確立する見通しが出来ましたので、試作機の開発に着手しました。

この商品の一番重要な部材は、Vol.9でもお話ししましたようにチョークコイルです。

そして、今回は、言葉は悪いのですが、PSEからどうやって逃れるかと言うことを考えて、信濃電気の営業時代からお客様から強く要望されていたアメリカ製の機材に対応する機能、出力120Vを上手く追加することにしました。

PSE取得のコストは、馬鹿になりません。

お約束の代々木八幡のJETに足を運んで、ステップアップトランスのPSE、特定電気用品、小型単相変圧器類、その他の家庭機器用変圧器は、500VA以上が対象外と言う回答を得ました。そうは言っても、商品化の時点では、PSE規格?を守り、耐圧、絶縁抵抗のテストをキチンと実施していますので、ご安心ください。

第一段階では、チョークコイルとステップアップトランス(100V⇒120V)の開発に入りました。

チョークコイルとステップアップトランス(100V⇒120V)の開発

チョークコイルとステップアップトランス(100V⇒120V)の開発

トランスの位置が…。

黒い物は、EIA2Uサイズのチョークコイルです。

一方、薄いサイズは、EIA1Uです。

2Uだと、全く同じになってしまいますので、何とか1Uに収まらないかと試作を重ねた結果、何とか収まりそうな目途がつきました。

そのため、従来の概念を覆すステップアップトランス搭載のEIA 1Uサイズの「GPC-T」の開発が、やっとスタートしました。実際には、ここで、挫折してしまうと、とんでもないことになりますから、否が応でもスタートしなければなりませんでした。

その後、数回の試作を経て、1Uサイズの試作機を製作しています。筐体も既存の1U仕様の箱を流用して、レイアウトを考え、何とか収まる形に近づいて行きました。

外観からは、従来の機能を継承して、パワースイッチにサーキットブレーカーを搭載。更にアナンログ式電流形に代わり、ノイズレスのLED表示の電流形を開発。

ラッキングした際に機材を追加する際の手間を考慮して、前面にも出力用コンセントを用意してリアの出力もできるだけ多く最低でも6口と機能面も確立して行きました。

初期は、シルバーバージョンも考えました。

初期は、シルバーバージョンも考えました

内部の試作

内部の試作

ご覧の通り、トランス、チョークコイルは、結束バンドで、仮留め状態です。

この段階のチョークコイルは、最初の試作機と同じようにするために一つのコイルに直列に二つのコイルとなるように設計変更して、1Uに収めています。

この開発は、通信工業業界の特別仕様のトランスを開発、製作しているメーカーにお願いして、製造しています。かなり無理な注文で、難しかったそうです。

この段階では、電源としての音質的な評価は、データよりも聴感を重視して、エネルギーとしてプロオーディオ、ホームオーディオにふさわしい電源が供給出来るかと言うスタンスで臨みました。

2007年の真夏に、最終的なこの試作機を持って、様々な方に評価していただき、最終的に「GO」サインを出して、秋のハイエンドショウ、InterBEEに出展しました。

ありがたいことに開発費用等の影響で、広告宣伝などの費用まで、手が回らなかったにも関わらず、予約など頂き、何とか量産体制に入り、2008年1月からの販売にこぎつけました。

Volt Ampere GPC-T

Volt Ampere GPC-T

そして、2011年1月、「GPC-T」のブラッシュアップ版、「GPC-TQ」を発売いたしました。

変更点としては、チョークコイル、トランスのコアを固定しているボルト、ワッシャー、ナットを鉄製からポリカーボネート製にしました。

出来る限りコイルの共振を抑えることと非磁性体を使うことによる聴感上のSNの向上を目指しています。

また、同じ効果を狙って、天板を鉄製からアルミ製に変えています。

更に入力コンセントを一般的なニコオン製から楽器のPhoneプラグでお馴染みのSwitch Craft社のEAC309に変更と小規模ですが、音質が、向上するように改良しています。

ポリカーボネート製ボルト

ポリカーボネート製ボルト

 Volt Ampere GPC-TQ

天板に回路のイメージ図をデザインしてみました。

フロントパネルもレイアウトの変更はありませんが、シンプルなデザインを目指しています。

Volt Ampere GPC-TQ リアパネル

現状は、単一機種構成ですが、出来るだけ皆様のニーズにお応えできるようにしていきたいと考えていますので、今後に御期待下さい。

とありきたりな終わり方ですが、この辺で、開発秘話を終わらせていただきます。

当初は、10回位で終る予定でしたが、面白いテーマがありまして、11回目を考えています。

来月には、お話しできるようにしたと思いますので、お楽しみに。

2011年5月23日

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