電源物語

Vol.8 : Smart Grid(スマートグリッド)について

この度の東北・関東大地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに被災された方々にお見舞い申し上げます。

今回の大地震では、大津波による被害と福島第一原発の事故やそれに伴う東京電力管内発電所の被害による発電能力のダウンのため、電力供給能力の大幅な低下による電力不足が、東京電力管内では、計画停電と言う形になって、表面化しています。

その際、ハイエンドオーディオや楽器・音楽制作では、当り前のこととして語られてきた50Hz、60Hzの電源周波数のことが、クローズアップされました。電源物語Vol.5で、その点にも触れていますので、ご確認頂ければ幸いです。そのVol.5では、「電源が、日本経済を救う?」というテーマで妄想を書いていますが、今では、現実の問題として、真剣に考えなくてはいけない状況なのかも知れませんので、予定を変更して、一歩進んだ電源供給システムとして「Smart Grid(スマートグリッド)」についてお話したいと思いますので、お付き合い願います。

私自身も勉強を始めたばかりの知識ですが、出来る範囲での説明となりますが、ご容赦ください。

最初に「スマートグリッド」とは、何か。

直訳すると「賢い格子状の構造」つまり「賢い送電網」という情報通信、IT技術を使って電力をネットワークのように効率よく配信、運用しようと言うことです。この言葉が、注目を浴びたのは、2008年のリーマンショック以降に誕生したアメリカのオバマ大統領の「グリーン・ニューデール政策」からです。それは、アメリカも従来型の公共投資ではなく、太陽光、風力発電等の自然再生エネルギーを中心にした「スマートグリッド」を全米に構築して雇用と経済を立て直そうと言う計画でした。日本でも民主党政権が誕生し、鳩山首相が、地球温暖化防止のためCO2排出量削減を掲げて、似たようなプランを打ち出しましたが、具体的な説明はありませんでした。アメリカは、発電会社と送電会社が、分かれていて、特に送電網の老朽化が顕著なため、導入しやすいが、日本の場合、送電網などのインフラ整備が進んでいるために新たな構築が難しいと言う背景があり、とりあえず最初の政策として取り上げたのかも知れません。そうは、言っても具体的にCO2を減らすには、相当の技術革新が必要で、特に自然再生エネルギーの活用は、必須でした。その中に発電時にCO?を排出しないと言うことで原子力発電が、注目されていたことは、今回の震災では、皮肉な結果を招いてしまいました。

さて、今の計画停電で問題になったのは、基本的に電気は大量に貯めて置くことはできないと言うことでした。

そのために東京電力以東~以北は、50Hz、中部電力から西は、60Hzと周波数が異なったため、電力供給に余力がある中部電力、北陸電力、関西電力の各社から電力を融通してもらう際には、周波数変換所を使わなくてはならないことが注目され、その処理能力が、約100万kWだと言うことで、電力の供給不足が、明らかになったわけです。

周波数変換所(F.C.)は、静岡県佐久間(約30万kW)、長野県新信濃(約60万kW)を連携して供給されています。

佐久間周波数変換所

佐久間周波数変換所

周波数境界

周波数境界

電気を貯めるには、蓄電池やコンデンサが、ありますが、今の技術では、何万kWもの電力を蓄えることはできないので、電力会社間でその都度、融通して合っているのです。また、遠隔地からの送電は、送電ロスが生じ、大電力の送電が困難なため、計画停電という事態になった訳です。

それでは、「スマートグリッド」について説明して行きましょう。

スマートグリッド

スマートグリッド概念図

スマートグリッド概念図

文字通り、賢い送電・電力網です。

従来の送電網は、大規模発電設備から高圧線を使って、需要家の多い都市部などの変電所に送電して、各需要家に給電していましたが、先程も述べたように送電ロスもありますし、規模の大きな発電設備ですから、広大な土地も必要になってきます。(ここだけの話、原発が、本当に安全なら需要家の多い東京湾内に建設しても良い訳です。)

都市部の需要

そこで、小規模の発電設備で、需要家の近くで発電して、ロスなく送電する。

また、小規模なので、需要と供給のアンバランスを「スマートメーター」と言う賢い電力計によってネットワーク化して、お互いの電力をバランス良く融通し合うと言う仕組みです。そのために、風力や太陽光と言った自然再生エネルギーを有効に活用することが、重要なポイントになってきます。そこで、発電された電力は、蓄電池やコンデンサ(ウルトラ・キャパシタ)等で、充分に蓄えることが出来る容量なので、天候や風向きなど自然環境の影響を受けない供給体制になります。また、自動車も家電製品の一部となり、搭載されているバッテリーが、各家庭の電力を蓄えるアイテムとなります。だから、各自動車会社が、プラグインハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車の開発に躍起になっているのです。次世代自動車の覇権を握ると共にエネルギー市場でも優位に立てると言う訳です。

自然エネルギー

再生可能な自然エネルギーは、需要家の近くで発電して、なおかつ送電ロスが少ないことが、メリットですが、逆に規模が小さいため、大口需要家(大型ビル、工場、鉄道)には、電力を賄いきれません。

そのために、日当たりの良い地域や風の強い地域などでは、「エネルギーファーム」と言う「電気の農場」を作ります。アメリカでは、石油生産地として名高いテキサス州が、最も風力発電導入が、進んでいます。過疎化が進んだ農村地帯に巨大な風力発電所が建設されています。

その誘致によって、周辺産業が生まれ、雇用によって、町にも活気が戻ってきたそうです。東京湾の湾岸道路、新木場辺りを観ると大きな風力発電の風車がありますが、これを数多く設営して規模の大きな発電所を作るのということです。ヨーロッパでは、バルト海の風力発電所が、有名です。実際に見たことはありませんが、海岸線を数百と言う大型の風力発電機が林立する姿は、さぞかし壮観なことでしょう。

風力発電機

また、川崎市と東京電力は、大規模ソーラー発電所の着工、2011年中の稼働で、合意しています。(大丈夫か?東京電力)

大規模ソーラー発電所

そこで、送電ロスの問題ですが、日本では、住友電気工業が開発した超電導ケーブルは、送電ロスが、従来の送電ケーブルの1/4となり、更に直流ケーブに至っては1/40になり、そうなると何百kmも離れた遠隔地からの送電も可能になるということあり得ます。

http://www.sei.co.jp/super/cable/index.html

このような再生可能な自然エネルギー発電所から送電し、需要家近くでは、各家庭、事業所単位での小規模発電システムと蓄電システムを融合させてネットワークで、結び電力や情報のやり取りをする電力網が「スマートグリッド」です。

今までの電力網は、基本的には、発電所からの一方通行でしたが「スマートグリッド」は、発電所と需要家とをネットワークで結び、双方向で電力を融通するという画期的なシステムです。

ある地域、需要家は電力を必要としていて、足りないが、別の個所では、電力は余っている、すると「スマートメーター」が、情報のやり取りの中で、余っている個所から融通して電力不足を補ってあげるというシステムで、電力の相互利用が、成り立つのです。

駆け足で簡単な説明になってしまいましたが、お判りになられましたでしょうか?大きな書店では、電気関係の書棚には、「スマートグリッド」の書籍が沢山ありますので、更に深くお知りになりたい方は、手に取ってみて下さい。

オーム社の「OHM」誌は、「スマートグリッド」の記事が数多く掲載されています

オーム社の「OHM」誌は、「スマートグリッド」の記事が数多く掲載されています

最後に妄想をお話してみたいと思います。

今回の震災で、壊滅的な被害に遭われた地域、人々は、膨大な数字になります。

新たな災害対策にしても、いつ何時、同じような想定外の災害に見舞われるか判りません。

いっそのこと、全く新しい街造り、地域造りに取り組んだ方が、良いのかもしれません。

津波で水没した田畑には、一面太陽光発電パネルを敷き詰め、リアス式の海岸には、風力発電の風車を建てる、海上、海中には、波力発電、潮流・海流発電、海洋温度差発電のモデルケースとして地域で、取り組むなど、自然再生エネルギー発電に特化した地域として、再生することを国の政策として考えてみることも必要なのではと思います。

更に、原発問題を含めて、国家としてのエネルギー政策を考える必要があるでしょう。

スマートグリッドの書籍

被災された方々に度重ねて、お見舞い申し上げます。

2011年3月25日

電源物語

製品種類別

468