

<テストレポート>
Crowley and Tripp Proscenium
(with ENHANCED AUDIO M600)
たいへん面白いです。いままでにこういう音のするマイクは経験がありません。
坂田梁山さんの尺八に使いましたが中〜高域の「鳴り具合」が最高にいいです。シビランスを適度に抑えて筒鳴りを引き立てる。尺八の少し割れたようなかすれたような微妙によごれた中域のニュアンスを前に出してくる。音色作りにとても役立ちます。うまく表現できませんがエッジの立った新品ではなく使い込まれて艶が出た革製品のような。そんな音楽的な部分で「ほしい質感」を強くクローズアップさせることが出来ました
こういうサウンドはコンデンサーマイクでは出せないですね。特徴的で強い個性だと思います。音楽の厚み重みや濃さみたいな部分を大事に出来る、演奏者が求めるものにかなり近づくようでプロデューサーにも好評でした。ボーカルやインストルメントでも主旋律としてメロディを「歌わせる」ものには凄くいいと思います。
リボンだからといってS/Nが悪いということは特にありません。ゲインも実用的です。
使い方としてはリボンならではのいくつかの配慮が必要ですが、難しいことではなくヒントはすぐに見えます。逆にそんな課題を楽しむような仕事が出来て、録音手法の成果としてはたいへん満足度の高い音作り、「音楽」作りが出来ます。ほんと楽しいです。
配慮点としては、第一に間違ってファンタムを入れないように要注意です。ルックスが高価なコンデンサーのようですので間違いは起きやすいでしょう。特にアシスタントへの厳重指導。投入時のショックを与えるのがよくないそうです。
つぎに指向性について、リボンならではの双指向性ですので裏側からのカブリを配慮します。指向パターンはシャープですので奏者の配置と向きを熟考すればそれほど難しくありません。
近接効果により特性の変化がありますが、これは積極的に利用できるフレンドリーなものです。
アンサンブルの中での音色としては高域のロールオフにより少し奥に引っ込む傾向が出ると思います。これを前に出す場合の手法はそれほど難しくなく、EQでちょっと突いてやるとか同シリーズのStudio Vocalistをチョイスするとか、場合によってはコンデンサーを追加セッティングしてシャープな高域をミックスしてあげてもいいのではないでしょうか。今回の録音ではほとんどノンEQで済みましたけど。
マイクマウントM600との組み合わせではヘッドの重量がありますのでブームをあまり伸ばさないで使います。ST210よりもっとしっかりしたスタンドがあるといいですね。M600はいわゆるリジットマウントですのでスタンドも含めてガッチリ固定のほうが音色的にも有利だと思います。
他のマイクロホンでは出せない強い個性を持っていますので今後たいへん重宝すると思います。決してチープなフェイクサウンドじゃないんで、音楽性のレベルの高い仕事では出番が多くなるはずです。これがないともう仕事が出来ないんじゃないだろうかと思うほどですね。
軽薄な音楽にならないようにいつも努力をしていますが、そんな私の仕事にはとても相性のいいマイクロホンです。
和楽器、生楽器専門の録音エンジニア S氏